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2016年10月29日 (土)

前橋おでんの日々

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2016年11月5日は Maebashi 45 DAYS 「一日限りの昭和屋台」なのである。

そこには、「前橋おでんと昭和でホッピー」とも書かれている。

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この「前橋おでん」だが、私が子供のころ、昭和45年ぐらいまでだろうか、一般的に存在したおでんのことである。

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具体的にどこにあったかといえば、八幡様の前の「ミカド」と「伴内」という駄菓子屋である。そして前橋児童遊園地や敷島公園ボート池の所の売店である。

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更に書けば、競輪場のゲート前の屋台のおでんも、この味だった。

ネタは「こんにゃく」と「さつま揚げ」が主。特に駄菓子屋などでは、その二種類がたくさん煮込まれていた。

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昭和40年代、こんにゃくとさつま揚げは一本10円だったと記憶する。茹で卵もあったが、そちらは20円で、毎日小遣いが10円の小学生が買えるものではなかった。

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だから近年になって「やきそばの橋本屋」での再会は衝撃的だった。

あの子供の頃の、匂いがよみがえり、味がよみがえったのである。

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だから、我が夫婦は時折行っていたのであるが、2011年9月30日だった。前橋最後の「前橋おでん」の店が閉店してしまったのである。

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あれから5年。ついに「あの匂いと味をよみがえらせよう!!」と今回の企画で我が家が手を挙げたのだった。

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まずは、まだまだ健在の橋本屋のおやじさんに話を聞くこととなった。

そこで出てきた言葉には困ったことがあった。「サバの粗削り」から始まり、こんにゃくもさつま揚げも買っていた店が「もう閉まってしまった」というのである。

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すぐに誰かがネットで検索し、奥さんのえりこさんは近所の店を回って歩いた。

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いやはや、前橋おでんは簡単なものではなかったのである。

ずいぶん前に我が町内の和菓子屋さんで働いていた人の話では「あんなん、濃口醤油と砂糖だけだよ」とは聞いていた。橋本屋さんでは「濃口醤油と日本酒」。

東京での聞き込みにヒントはあった。

「昔はね。カツオ節って看板が出てなかったから。みんなサバ節」

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「サバの粗削りだったら、築地に行けばやってくれるよ。でも、トビウオを入れた方がいいな」

「今の粉で作ったこんにゃくはだめだ。手作りじゃないと味が染みない」とのこと。だから剣山で刺して穴を開けてからアク抜きすると良いとか。

西浅草で若いやつがやっている店で食べた塩おでんの「ちくわ」が美味しかった。「これね、普通の安い竹輪の4倍ぐらいの値段なんすよ。でも、これは出汁がでて3日煮込んでも崩れない」と。彼のちくわぶもしっかりした良いものだった。

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その西浅草の店で出会った道具街で生まれた人は「この裏に小さな神社があるでしょ。あの前におでんの屋台が出ていたんですよ。」と語りだした。おやばあちゃんが、あまりにも美味しいので味付けを聞くと、濃口醤油と日本酒と言っていたらしい。更に彼は「真っ黒く汁が染みたはんぺんが好きだった」とも言った。

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えりこさんは、日々自宅でおでんを作り、私は毎週末試食をし、東京で聞き込みをする。つまり、「前橋おでん」は、昔の関東のおでん「煮込みおでん」の前橋版なのである。

東京から始まったであろう濃口醤油に僅かな甘みを加えた出汁のおでんが、前橋で独自のものになったのだろう。独自というのは、主にこんにゃくとさつま揚げのおでんである。

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まずは出汁の香りと味であるが、食感も大切であることに気づく。何度も作ってきたところ、ある日の試食品は、あのおでんの食感だったのだ。昔のこんにゃくは気泡があってそこに熱々の汁がしみ込んでいて、食感はプリプリして、ピュッと熱々の汁がでる。その感じができ、その感じを、私の口は鮮明に思い出したのだった。

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そして、そんなおでんを自宅でも作って食べていたことも思い出した。あのおでんが姿を消したのは、昭和40年代、前三の登場である。地下の食品フロアーで「紀文」などの様々なおでんのネタを売り出したのである。それとともに、汁は濃口醤油ではなく、品の良い透き通るようなものになっていったのである。

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今、「おでん」と言っても濃口醤油の黒っぽい汁の中から、できるだけ黒っぽい、良く味の染みたこんにゃくを探して食べる…そんなことが想像できる人は少ないだろう。

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さて、前橋おでんの準備は着々と進んでいる。懐かしい「黒いおでん」を楽しめると思う。

更にホッピーで、昭和の雰囲気を味わってもらいたい。

そして、チラシにミゼットが描かれているのであるから、本日はミゼットを前橋まで運んできた。

11月5日の土曜日。私も、前橋おでんとホッピーを味わい、幼い頃を思い出すのが楽しみなのである。

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