イルカにのった中年
700円と価格も手ごろで、コーヒーも付く。しかし、ここのところ「タコライス」の日に行く事が多いようだ。ちょっとサイクルを外してみたりもするのだが、どうしても巡り合ってしまう。
もしかして一日おきかもしれないから、水曜日を外して、木曜日に行ってみようかと。
帰りは、上野のうどん屋「司馬」に寄った。今週末から前橋で昔の鉄道写真の写真展を開催するからである。この店には、水上温泉の旅館の営業さんが来ているので、その方にアピールをしようかと思って。
で、頼んだのは「たぬき豆腐」。勿論、私の発案で始まったメニューである。いや~、美味しかった。
軽く飲んで、田原町へと行き、炭火焼「天笑」にもチラシを持って顔をだす。
常連の「シニア」と「先生」がカウンターにいたが、もう二人、おかしなカップルがいて、私が座る場所がなさそうなので、背後のテーブルに腰掛ける。他にはお客さんが二組。もう、随分と飲んだのだろうか、随分と静かに落ち着いている。
カウンターから聞こえてくる常連二人の会話に、時折割り込みながら飲む。すると「イルカ」という言葉が聞こえてきた。「そのピンク色のところがさ~」などとも聞こえてくる。私も早速参戦する。「私、以前イルカ食べたことありますよ。皆も美味しい、美味しいって。でも『イルカ』って言ったら、みんな食べなくなっちゃってね。
しばらくすると、香ばしい匂いが漂ってきた。そのピンク色のところを串に刺して、塩焼きをしたら美味いのじゃないか、となったらしい。様子を察して「私も食べる!!」と参戦する。
焼いたのは、皮と脂身であるから、途中から、もうもうと煙を上げ、凄い匂いが店内に充満した。
「はいよ。のぶちゃんの分ね」と店長が一本持ってきた。赤身のところもあるよと聞いていたが、それはあまりにも少なかった。先ずは、その赤身部分を中心に食べる。油がしつこいが、意外といける。そして、脂身部分もかじってみる。意外と、トントロ的な食感と味わいで、ついついもう一口かじってしまう。
しかし、皮が近付くととんでもなかった。強烈な匂いが口の中に広がった。経験から言って、獣の匂いである。そして、あとから口の中に渋みがやってきた。
こんなことを書きながらも、私は6切れのうちの二切れを味わったのであるが。
「塩で焼いたら美味いかも知れないよ」と言う話にのってしまったものの、全員がまともに食べられなかった。でも、私はイルカの気持ちと、この肉を持って来てくれた若奥さんのことを考え、二切れを食べたのだった。
食感や、油のとろける感じは、とても良かったのだが、口の奥から出てくる渋みと、獣のような匂いは店を出ても残っていた。司馬は大したものはないので、口直しで寄ったつもりの天笑であったが、これこそ口直しが必要な状況になってしまった。
その晩、私はイルカの残り香と共に布団に入ったのであった。
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