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2012年10月21日 (日)

大新のおばちゃんが亡くなった。

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前橋市街を走っていた路面電車の線路を見たくてちょっと関根町まで行った。

駐車場を管理していた女性に声を掛けられ、「レールが見たくてやってきました」と言うと、「今、車も出るから、好きなだけ撮って行ってください」などと、愛想の良い返事をもらった。

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気持ち良く、路面電車のレールの写真を撮って昼食に向かったのは、いつもの大新だった。今年は月に一度くらいに行っていて、「ちょっと行きすぎか」とも思ったが。

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大新は、戸は開いていたが、暖簾が中にかかっていた。それを、えりこさんが指摘して「どうしたんだろう」と言う。「どっちかが出かけているんじゃない。そのうち帰ってくるんじゃない」などと話をして、様子を見に行ってもらう。私は、ビートルの窓を閉めて降りる準備。

すると、えりこさんが店から手を振る。

「やっぱり、やってくれるんだ」と思い、近付いて行くと、「おばさんが亡くなったんだって」とのこと。

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「お線香を上げてってくれって」

先月も来たばかりなのに。おじさんよりも元気にしていたのに。

先月の25日は普通に営業をして、26日も朝ウォーキングに出て、「かぼちゃでも食べようか」ってところで倒れたのだそうだ。群大に2日ほど入院して亡くなったのだそうだ。75歳「お寺では76歳っていうんだけどね」だったそうだ。

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先月来た時に、前橋駅の南に家を買うような話をしていたが、しばらくはそこから店に通い、80歳になったら店を閉めてそこに住むことになっていたとのこと。

「おばあちゃんが居なくなったから、もうお店やっていけないね。」

向こうの家に住んだら、この店は手放すのだろう。

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私がこんな前橋歩きを始めたのは、5年ほど前。夏の暑い日、前橋の七夕の日に、前橋公園の裏まで歩いてきて、ビールを飲める食堂を探していた時だった。広瀬川を渡って行くと、暖簾を出して戸を開けっ放しのラーメン屋が目に入った。

「ここなら、餃子でビールでいける」と、暖簾をくぐると、おやじさんは座敷で寝転んで高校野球を観ていた。

「ばあさんが七夕に買物に出ているから」といいつつも、餃子を焼いてビールを出してくれた。

「前商は勝ったんですか」などと話を始めてしばらくすると、戦後間もない頃、堀川町で仕事をもらって仕事をしたことがあると、言い出した。どうも、話の感じは、私の親戚の信沢左官屋の辺りだった。

元々は増田から出てきた話などで盛り上がり、二本目のビールを飲みだしたところで、おばあさんが帰って来た。

帰ってくると、すぐに中に入り、何か料理を始めた。しばらくおじいさんと話をしていると、「はいよ」と、野菜炒めがでてきた。

「おじいさんの相手をしてくれてたからね」

「じゃ、もう一本飲まなくちゃ」

これが始まりだった。

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最近は、夫婦で行くが、野菜炒めを注文するといつも「二人分」と大盛りにしてくれた。「野菜炒めは簡単だからね」とも言っていた。

おじいさんは、「一週間は何か食べるけど、味も何もしなかったね」と、やっと落ち着いてきたと話してくれた。

暖簾は仕舞ったが、「誰かが立ち寄ってくれるだろう」と戸を空けて、居るんだろう。

「おじさんは、おばさんの分も長生きしてよ」などと言って店を出た。

周りの写真を撮っていると、中から「チン、チン」と音が聞こえた。私達のことをおばあさんへ報告したのだろうか。

人間だから、歳を取ったら死んでいってしまうのだが、折角仲が良くなったのに、とても元気そうだったのに。

最近の私は、とてもおばちゃんに気に入ってもらっていた。私が絵を描いてデザインしたTシャツを見せてからだ。

「こんな能力がある人が、もったいないね」と会うたびに言う。

「でも、これは趣味だから」と私も、そのたびに言う。

ああ、残念だ。でも、それが人生なんだし…。

なんとなく、大新へ寄っただけだったが、もしかするとおばあさんが呼んだのかもしれない。

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