でもね、オレね~、4万しか持ってない
「これは、オヤジさんに何かあったかな」と思い、昨晩は真っ直ぐにマンションへと戻ったのである。
「いや、オヤジの今後の詳細が、具体的に決まってね。先ずは抗生物質で治療して、そのあと様子をみて、手術を…」
やはりそうであった。
「一杯だけ飲んでいくよ」と言い、そのオヤジさんの具合が聞けただけで、私としてはOKなのである。マスターとは、同い年で、やはりお父さんの具合が悪いとなると他人事とは思えないから。
「よってん家」を出て、歩いていると、小さなカラオケ・スナックから、二人が出てきた。
「でもね~、オレね~、4万しか持ってないから。マジデ、マジデ」
常連さんと、ママさんらしい。私が歩いているのを見ると、店の側、陰になるように、引っ込んでいった。
常連だから、ツケが利くのだろう。そのツケの分を払おうと思い、「4万円」を用意してきたが、どうもそれ以上だったのだろう。サラリーマンが、飲み代で4万円とは大きい。全部払って帰ろうと、奥さんに内緒で都合してきたのではないだろうか。
または、内金として払っておけば、どうにかなるかと思っていたのではないか。
しかし、その4万円は、ママさんにとっては少な過ぎた。それで、トラブルになりそうになり、二人して内緒の話をするために店を出た。そこに私がたまたま通りがかったのであろう。
常連になれば「ツケ」も利いて、「いざ」という時に大変便利でありがたいものである。しかし、それは「いざ」という時のためのものであるのだ。私の経験では、「いざ」という時に、飲ましてもらったことはある。会社の経費になる場合は、請求書を会社に送ってもらえばいいだけで、そこで清算できれば良い。
しかし、そうでない場合、個人的な場合は、すぐにでもお金を持って飲みに行き、清算をしてきた経緯がある。お客さんや、後輩に飲ませてあげ、さらにまた飲みに行くのであるから、無駄金のように思えるが、今宵の光景を見て、「それは正しかった」と思ったのであった。
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