台風一過で、みのもんた。
午前は少々雨が残ったものの、昼食頃には晴れ渡り、爽やかな秋風が吹きぬけていた。朝方、あんなに雨が降っていたというのに、この乾燥した空気は、いったいどうしたらそうなるのか、人力では想像できない爽やかな空気に入れ替わっていた。
仕事帰りの私は、そんなことは、どうでも良くなっていた。それに外は爽やかな風が吹き抜ける。
土日にイベント続きで、地元の床屋へ行けそうもない。「あと一週間以上我慢をするのか」とも思ったが、来週は営業のセミナーがあり客前で、パソコンを操作しなければいけない。
そこで、さっさと会社を出て床屋に向かった。ただし、店の場所は、うろ覚えである。
「もしかすると、この道ではなかったのでは」と心配になったころ、バーバーコンドウは姿を見せた。
古めかしい床屋で、いつも帰りに見るとお客さんはいない。
クリスマス時期には、控えめながら電飾も灯り、営業努力は感じられる。
「いいですか?」と入ると、「いいですよ。」と私の父親よりちょっと若いであろうご主人が出迎えてくれた。
どういう風に説明をしようか考えてはいたが、いざ床屋の椅子に座って、おやじさんの顔を見ていると、言いたいことも全ては言えなくなってしまう。
鏡に映った、頭を濡らして、クシを通して、ハサミを入れる右手は、小刻みに震えていた。
それでも、おやじさんは、きっと昔から変わらないのであろう、丁寧にハサミを入れていく。少しずつだが、確実に仕事をこなしていく。
震える右手も、カミソリが肌に当たると落ち着くのだろう。左手で、そり残しを探しながら、確実に剃っていく。
はじめの内は、不安で硬くなっていた身体も、おやじさんの確実な仕事に少しずつ緩んでいく。
大量のシャンプーに不安を覚え、時折、目に映る振るえた右手に、身体を硬くする。
時折、世間話を私からして、おやじさんにも落ち着きを与え、おやじさんの腕に信頼している顔つきをする努力をする。
最後の、最後まで、おやじさんは丁寧に仕事をし尽くしてくれた。私が望んだ髪型ではなかったが。オールバックのようにしたら私の父親に似てくるのかと思ったが。
結局は、「みのもんた」のような顔つきになって仕上がった。
一時間以上は掛かったと思う。それでも、おやじさんは今まで通り、きちんと仕事をしていたと思う。
70歳になっても、同じように仕事が出来る。幸せなことだと思った。
50年経った建物の床屋で散髪をしたあとは、やはり戦前からある店で酒を飲まなければいけない。
足は浅草橋へ向かい、鳥越の「鈴木酒場」のカウンターに腰掛けていた。
ずっと気になっていた床屋が済んだものの、どうも他の人の意見も聞いてみたい。
年配のオヤジの「さっぱりしたね。」ではいけない。
マンションの近くまで来てから、少し行き過ぎて、「よってん家」に寄る。
ちょうどひとつカウンターが空き、若い女性の隣に座り、本日の床屋について、独り言のように話し始める。
「似合ってますよ。」
女性のその一言でやっと落ち着いたようだ。ビールが美味しくなってきた。
「そうだ、今朝は台風だったんだ。」
朝、目が覚めたときは大荒れだったが、今は天気も、頭も落ち着いた。
仕事も忙しかったし、目まぐるしい一日だった。
そうそう、先週私が酔った勢いで「ラーメンをだけ食べに来た」と言ったら出してくれた「ラーソウ」だが、ちゃっかり「らぁソーメン」としてメニューになっていた。
「意外と、これがいけるんですよ。」と、しゃあしゃあと語るマスター。関西人の商魂はたくましいと感じるのだった。
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コメント
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投稿: スーパーコピー代引き | 2024年10月16日 (水) 06時54分