大内宿の隣で。
こんな山の行き止まりのようなところに酒造があるのか。ひとつの集落を抜け、右カーブをして橋を渡ると、道は左カーブを描き、また集落となるが、その上に背の高い煙突が飛び出していた。
朝早くて、人影もなく、「果たして今でも造っているのだろうか?」と思った。
それで今年もやって来てみた。国道から左に折れると道は狭いが、もう今年は心構えができている。
「こんな何にも無いような田舎に、酒造があるんだよ。」と助手席の妻である、えりこさんに説明をしながら行く。
橋を渡ると、小さな集落に煙突が覗いている。なんて良い景色だろうか。今は、田舎の小さな集落だが、その煙突と酒造が、この町の歴史を物語っている。
今年は午前9時を回っているから、町に活気がある。消防団の前には、2、3台の軽トラが止まり、トラクターが田んぼに出かけていく。
すれ違いも大変な通りだが、クルマを止めるところは心得ている。
「やっているかな~。」と言いながらクルマを降りて、道沿いを歩くと、玄関が開いていて、人影がある。
ゴールデンウィークで遊びに来たであろう子供たちがテレビの前でふざけ、その子達のお母さんらしい人と、おばあさん。
「お酒売ってますか?」と言うと、子供の一人が、
「ありますよ!」と言って奥へ入って行った。
「ここで造っているお酒はありますか。」
「今は、協業だけど、ここで造っているよ。一升瓶と、四合の純米酒があるけど。」
「じゃ、その四合の純米酒をください。」
「ちょっと待ってね。」とおばあさんは奥へ。
「これでいいです。」と言うと、今度は、箱を取ってくると、また奥へ戻ってしまった。要領を得た私は、店先に出て、写真を撮りながらおばあさんを待つ。
箱に入れるのを手伝って、袋は要らないというのに、袋を取ろうとするのを手伝って、お金を払おうとしたら、なんと「960円」だという。
ついつい「安すぎないかい。」と口から出る。
「この店はいつ頃からあるんですか。」と聞いてしまったからいけなかったのか。
「こう見えても、古いんだよ。明治の初めからやっているんだよ。」と話を始めてしまった。
もともとは、ここが会津西街道で、川沿いの道、今の国道は、鉄道かできてかららしい。つまり、この道が大内宿に続き、本郷に抜ける街道なのである。
おばあさんが、大内宿から本郷に抜ける道も舗装されて良くなったから、戻らないで、こっちから行きなさいとしきりに言う。
中山峠という小さな峠を越えて、ひとつ宿場を抜けると、大内宿まであと一里。古い集落の残る道を大変楽しませていただいた。毎年のように来てはいるが、こんな良いところがあったとは。
大内宿近くの丁字路に出ると、今までののんびりした光景とは正反対に、自動車たちが列を成していた。大内宿も魅力的なのかも知れないが、私たちにとっては、昔の街道沿いの古ぼけた景色の方が、よほど新鮮で良いものだった。
まあ、楽しみというものは、人それぞれだから、一概にどちらが良いとはいえないが。
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