伴内酒造をあとにして
町の中心的な酒造は、高い煙突が象徴的だ。町に向かって歩いて来ても、「あそこまで行けば酒造がある。」と目標になり、町のどこからも見える煙突は繁栄の証しのようなものでもある。
煙突を目指して歩き、帰りは別れを惜しむかのように、振り返りながら煙突を見る。
車が往来する道路を避けるかのように、伴内酒造の前を横切る道を歩く。少し赤城に向かって登っていくような道は、その地形からだろうか、不規則に右左に折れ、ゆるいカープを描くところもある。
日が暮れて来て、薄暗い中を行くが、間もなく駅に着くという気分からか、意外と落ち着いている。歩いて柳澤酒造で酒を買い。そこから歩いて伴内酒造の建物がいまだに健在なことを確認できたのも良かったのだろう。
大きな梅の木が並んだ、畑の脇の小道。何本か引っこ抜かれた小さな大根畑。それらがとても自然と存在している。とても生活に密着している感じがする。
勾配が急になり、道路がくねくねとカーブをする辺りに、綺麗に木が植えられ、板塀で囲まれた大きな家が見えてきた。
人為的に揃えられて植えられた木々が美しい、なんとも懐かしい光景を造っている。なんて贅沢なんだろう。自分だけが楽しむのではなく、周りを行く人から見ても、心が和む美しさだ。
カーブの正面に建つ家も良い風情だ。昔は道がカーブしていたり、丁字路で突き当たっていたり、それが当たり前だったのだが。いつの間にか、どこも車が走りやすいようにまっすぐになってしまった。
黒い板塀と、薄っすらと夕日を受ける白い土蔵も艶かしくて美しい。
カーブをくねくねと抜けて集落の外れに出ると、敷地の広い神社があった。昔は、ここに集い、祭りを行ったであろうに、今は使われている気配のない建物が残る。
そこから膳駅までは、大きな酒屋や、鉄工所などが点在する。道路が綺麗になり、膳駅が出来て、集落と駅を結ぶようになってから出来たのではなかろうか。しかし、自動車の普及した今は店を閉めてしまっている。
少し開けたところの向こう側に膳駅が見えて来た。ホームの向こうの建物は、ちょうど駅舎の様に建ち、やはり以前はホームと繋がった商店のようだ。
まずはホームの待合所に行き時刻表を調べる。
「07、37」という数字が、ずらりと並んでいる。味気ない感じもするが、常に30分間隔で運転されている。
踏切が近付いた時から目に入ってはいたが、やはりここには居酒屋があった。前橋まで行ってしまったら家まで10分ほどだから、途中で飲む理由を探すのは難しい。
帰りの電車の時間も頭に入ったし、ここらで休憩をして帰ろう。私は、恐る恐る居酒屋のドアを開けた。
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