ナローゲージ
「508mm(1フィート8インチ)ぐらいだろうか? いやもっと狭いかもしれない」
頭の中でつぶやいた。
私も以前行ったことがあるところのそばだ。私は、そこへ向かってクルマを走らせた。そこへ行く近道はある。いや近道ではないかもしれない。以前その近道を地図で見つけ走ったことはあるが、とんでもない峠道で、普通に県道から行く方が早かった記憶がある。
地図を見ても、いくつかの道はあれど、それがどのくらい山道が険しいのかはわからない。私は変な近道を考えずに、幹線道路を使ってそこへ向かった。やはり、日は陰り始めてしまった。
だいたい、普通に朝起きして、「そうだ行こう!」と言ったところで、簡単に行ける距離ではない。でも一度行きたかった。とにかくそこの崖を目指して行くと、トンネルがあり、片隅に線路が敷かれていた。
「ここだ!」ともしかすると、声に出していたかもしれない、
トンネルを出ると間もなく線路はなくなっていた。しかし、グルリと山に囲まれた小さな平地に残された線路。いや線路がなくても、この場所は写真に撮りたい。そう思わせる、今の日本にちょっとだけ残されたオアシスのような光景だった。
しかし、残念な事に綺麗に写真が撮れるほど明りは残されていなかった。それよりも、今くぐって来たトンネルの向こう側の線路を確かめなければいけない。私は、すぐにクルマをUターンさせトンネルに戻って行った。
トンネルを抜けると、線路は道路から外れて、大きな鉄工所といった感じの工場へと続いていた。
「ここだ!」と、きっと私は声を出したに違いない。工場の手前でクルマを止めると、私は吸い込まれる様に、そこへ向かっていた。工場内へ続く線路は、どうなっているのか全くわからないが、工場の脇へと続く線路を追いかけた。
中央が人やフォークリフトの通り道となり、線路はポイントで分かれて、その通路の両脇に延びていた。左側の線路は殆ど土に埋まり、その上には、工場の機器が置かれ、そこで線路などは関知していない感じで、作業をする人が。
右側は、線路を避けるようにして、様々なものが並び、線路の上にはトロッコも置かれていた。その線路の上でもやはり作業をしている人がいるが、今すぐにトロッコを転がす気配はない。
それにしても狭い。トロッコが狭い。線路は写真で見た時に1フィート8インチあるかないかと思えた。私は、工場を後にすると、トンネルの近くで寸法を測ってみた。
「15インチ…」
やはり狭かった。まさか日本にこのような線路が敷かれていたとは…。1フィートと1/4である。信じられなかった。しかし、このように常識を超えたナローゲージだから今でも人知れず残っているのかもしれないと思った。
あのトンネルの向こうの小さな平地には、その昔何か施設があったのかもしれないと、あとで思った。山の中の鉄道とはまるで縁のないようなところ。そんなところに線路は残っていたのだった。
(写真はイメージです。)
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