沼田の新町
鉄橋を渡ると、大きくS字を描いて山を登る。火の見のある角を右折しなければいけないが、父親はそれに気づかずに、良く山を登りきり、沼田の市街地まで行ってしまった。
その火の見の角を横切る通りは、一直線で古い家々がずらりと並び、子供の私でも、これは昔の街道だろうと感じていた。
そんなことに気づいてから、自動車時代になって出来た祖母の実家へと向かう道路から、何ヶ所かで、古い街道や、宿場らしい光景を見つけるようになった。
そして、近年になり渋川から沼田までの鉄道があり、それがこの辺りを走っていた事をし知る。終点は、沼田市街地の東京電力のところだったらしい。国鉄の上越線が出来あがるとすぐに廃止になるが、その頃、祖母の実家の手前にある下久屋発電所の工事用の線路もあったことを最近知る。
<font size=2>※正しくは「上久屋発電所」。この日は確か皆「下久屋の発電所」と呼んでいたと思うが、ちょうど下久屋と上久屋の境目の交差点近くだからだろう。</font>
そうすると俄然興味が湧いてくる。棚下を出たワーゲンは昭和村を抜けて、火の見やぐらのところへやって来た。農協の集荷所のところに停めて歩き出す。この集荷所は、何だか鉄道施設の様で、もしかしたらこの前に線路があったのではないかと、思っていた。
昔の街道を鉄橋の方に向かって歩き出す。棚下と同じ、蚕(かいこ)をやっていたであろう立派な農家が、今も点々と残っている。それにしても立派だ。一軒のとても立派な古い農家の前で、おばあちゃんに挨拶をすると、
「どこの誰だか知らないけれど、お茶でも飲んでいきなさい」と誘われる。
「写真を撮って帰りに寄りますよ」と先に向かう。
一直線の街道は、橋へ下るところになって、行き止まりのようになり、左右二手に分かれて坂を下る。どちらも鉄道の物にしては急過ぎる。下へ降りると、県道沿いに古い店が残っていた。戸が開いているのをいいことに、昔の鉄道のことを訪ねる。
すると「この辺りじゃ、年寄りと言えば大島さんだ。あの人ぐらいしか知らないだろう」という。
「あそれって、あの街道筋の左手の一番大きな家でしょ」と私。先ほどのおばあさんの家だ。たまたま表札を見ていた。
「おばあちゃん来たよ。おじいさんもいるかい?」と言うと、快く招き入れてくれた。
おじいさんは、「何か図面があるといいんだけどな」と白い半紙を持って来て、二つ折りにしてこの近辺の地図を書き、線路の場所を示してくれた。
おじいさんは何度も同じ話を繰り返していたが、そのようなことをしているうちに、思い出したらしい。
「この線路は、こっちじゃなくて、こっちだ」と地図を描き直してくれた。
火の見やぐらからは、しばらくは一直線に高台にある沼田市街地に向かう。坂が急で、一直線で、スピードが出過ぎて火の見の所で脱線したのを見たことがあると言っていた。
話し込んでいると、軽自動車で女性がやって来た。
「お客さんですか」と、おばあさんと何やら話しをしていたかと思ったら、台所へ入っていき、「じゃ、ごはん作りますね」と前掛けをしている様だった。ヘルパーさんがお夕飯を作りに来てくれたのだった。
なかなか感じの良い人で、大きなお屋敷に残された老夫婦にとって、介護のシステムも悪くはないと感じた。
あまりお邪魔をしても失礼なので、玄関へ向かうと、近所の人が持ってきてくれたという色鮮やかな野菜が置いてあった。
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