なくなりました。
6月末のことだった。
木造ながら洋風の造り、二階が出窓になって外に張り出しているのが良い。良くぞ今まで残っていてくれたと本当に思った。
住人は洒落てはいるが、拘りをもった、頑固者。情報通で、親しくなれば、国内外の最新情報を、面白楽しく話してくれる人。
そんな人を自然と想像していた。
客先のビルの近くにも古い商店が残っていた。お昼を食べに出るとき、そして戻って来た時に、必ずその家の前を通るようになった。
8月になり、本郷二丁目の家の近くに行くと、なにやら工事が入っていた。ついに取り壊しか…。岡山行から戻って、東京に来てみると本郷二丁目の家が無くなっていた。
折角、私が見つけた家なのに。勝手に壊されてしまった感じがした。
その日、客先近くの商店は、珍しく表の戸を開け放して、時にはおばあさんが、そして交代をするようにおじいさんが通りを見ながら座っていた。
余程声を掛けたかったのだが、客先でもあり、仕事の時間中は難しい。
今度、機会があったらお話を聞きたいと思ったが、翌々日に客先に行くと、解体が始まっていた。
翌週月曜日、解体はほぼ終わっていた。解体途中を見ると、中の柱や梁は太いとはいえないが、雨漏りがあったふうもなく、とてもカッチリとしていた。
きっと、壊している人も「もったいない」、「しょうがない」と感じながら作業をしているのだろう。
客先の近所に「更地」が現れた。こうして写真で見てくれば、どんな建物が建っていたのかは分かるが、実際には「さて、ここには何が、どんな建物があったのだろう」となる。
あまりの景色の変わりように、もう昔の、いや数日前の景色は想像が難しい。
そうして少しずつ昭和の面影は消え去っていく。
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